Manga Field

わたしはたぶん、球場で野球を観戦したことが1度くらいはあるのです。幼い頃に、父に連れて行ってもらったことがあったような気がします。ですが、ほとんど覚えていないのです。ウワァっと人がたくさんいて、あるようでない匂い、どこからか湧く歓声が散り、吸い込まれる広いスペースの空気感。そんなようものをおぼろげに記憶しています。あるいは、思い出そうとして思い出しきれない部分を改ざんするなりでっちあげるなりした記憶かもしれません。


スポーツは観戦するよりプレイするほうが好きです。むかしからわたしは何かとそんなようなことを言ってきましたが、そもそも観戦することとじぶんがプレイすることを同列に語るのはおかしなことかもしれません。


サッカーを観ることは、わりと好きです。ですがテレビで日本代表の試合を観ることがあるくらいで、フィールドに足を運ぶことはありませんでした。


スポーツの観戦以外のことでも、大きな会場のひとつの点にじぶんがなる、ということがあまりありませんでした。人間の一部としてのわたしは、まとまりのない個体といえるかもしれません。


じぶんが大きな会場の点になる機会といえるかわかりませんが、近年のわたしはたまに、漫画の同人誌即売会に足を運びます。点といえどもそれぞれがウヨウヨと動き回るので、席を購入してステージなりフィールドの上で起こることにみんなで一緒に注目する、というのとは異なります。たくさんの目が、それぞれに、たくさんの輝きに眼差しを向けるということが大きな会場の中で一斉に起こるイベント、それが漫画の同人誌即売会です。こんな熱量のあるできごとが社会にあるなんてことをわたしは知りませんでしたから、とても近年のわたしの人格に影響を及ぼすものとの出会いだったといえるかもしれません。


野球の話にはじまり漫画の同人誌即売会の話に逸れるというインドアぶりです。


お読みいただき、ありがとうございました。