お盆を持って、おっとっと。

球体があるとします。じぶんで動くことができない球体は、転がすしかありません。風が吹いても転がるでしょう。風の代わりに息を吹きかけるでも良いでしょう。球体の接する面が平らならば、よく転がることでしょう。


長い坂道の途中に球をおとしたら、下に向かってどんどん転がっていくでしょう。長い坂道という環境を簡単には変えられない場合、球はなす術もなく落ちていきます。


お盆の上の球を想像するとします。あなたはお盆を持っているのです。限りなく水平を保ってお盆を持ってやれば、球はぴたりと止まるでしょう。息を吹きかけたくらいでも簡単に球が動き出すことと思います。傾けてお盆を持てば、簡単に球は動きます。


ほかの誰かと一緒にお盆を持ったらどうでしょう。お盆がすごく大きかったらどうでしょう。四角いお盆だったとして、四隅に1人ずつついてようやく持てるくらいのサイズのお盆を想像してください。球をあっちへこっちへぐるぐると転がします。なんだか、ちょっと楽しそうかもしれません。


四隅に1人ずつといいましたが、こんどはそれぞれの辺に沢山の人がついて、やっと持てるくらい大きいお盆を想像してください。球のほうもそれなりの大きさだとします。よっぽど硬い素材でもなけりゃ、あんまり大きなお盆はたわむかもしれません。大人数でやるところを想像するなら、お盆よりも巨大な布をみんなでひっぱりあって、その上に大きな球を乗せているようなシーンの方が想像しやすいでしょうか……それでも良いと思います。


ちょっとみんなで布をたわませて、せーのっ! で一気に布を引っ張りあったら、球は跳ね上がるかもしれません。見てるほうも楽しいかもしれませんね。布の持ち手に志願してくる人もどんどん現れるかもしれません。


布でも巨大なお盆でもいいのですが、たくさんの持ち手がそれぞれ高さのちがうところに立っていたら大変です。球のコントロールなんてできたものじゃありません。すぐに盆面やら布面かこぼれ落ちてしまうかもしれません。まずおのおの、平な面にお互い立つところからやっとこさ、球を動かすというあそびが始まるのです。あそびでも仕事でも良いのですけれどね。両者を厳密に区別する必要も、多くの場合はないのかもしれません(勝手にありもしないその分別の必要性をつくりだし、おのれに強いていることがわたしにはないだろうか……などと考えます)。


ひとりで球を乗せたお盆を持つくらいなら、どこに立つかという点での選択肢は多いでしょう。その立地を選ぶ自由、どんな規模におのれの身を置くかの自由もあるはずです。それによって、動かせる球の大きさも変わってくると思います。


球の質感とか重さとか、色とか柄とか……ひとつのお盆のうえに何個も乗せるとか……お盆という地平を2階建てとか3階建てにするとか……いろいろなパターンも想像できます。


お読みいただき、ありがとうございました。球体未満のいびつな物体を転がして、地道に球にしていくとか……