バカサレル

意識すればするほど、あるはずのないものだとしても、そこに存在しているような気がしてくる。


でも、実際は、なぁんだそんなことか、という程度のものは多い。


わたしの目が、勝手にそのように見ているのだ。つまりは、わたしのなかのものが原因で、わたしはあらゆるものを知覚している。


ないものは、ない。元になるものが存在しなければ、それをきっかけにした二次的なものもない。


人をコントロールする術に、ありもしないことで不安をあおったり、あるいはおおげさに見せることで恐怖を抱かせたりして、特定の方へ誘導するというものがあるようだ。


それら不安や恐怖のもととなるものは、あらかじめわたしのなかにある。そうでなければ、知覚できない。


現実は、作り話とは違う。起こり得ないことはあるし、真実は揺るがない。それらと、わたしの知覚とのあいだに横たわる差異がある。


正体不明のものを手当たり次第に怖がるのは、生きる本能かもしれない。それを手放すことは、生命としての反射機構を崩壊させることと言い換えてもいい。人間が長い歳月を費やして獲得した、特殊能力である。


「生命っぽさ」と引き換えに、稀有なアイデンティティを確立した、75億人のエスパーの星。



なんだかよくわかりませんが、人間のほうこそ、狐や狸のようなものかもしれませんね。