衛生環境の向上は免疫力を弱めますか?

〈衛生環境が向上して、さまざまな雑菌に触れる機会が少なくなったために、ひと昔前の人たちと比べて現代の人たちは、雑菌に対する免疫力があまりない〉という理屈を聞いたことがあります。なるほどなぁと思って、僕はこれを結構間に受けているところもあります。


これは、〈多様なものと共存する者ほど、強く、能力が高くなりやすい〉という理屈と、いくぶん親和性があるといいますか、お互いの理屈を裏付けるところがありそうに思うのです。


僕はかつて、中学校にある「特別支援学級」で数年間、働いていました。その名前に冠されているとおり、「特別な支援」を補助することが、僕の仕事でした。「支援」の「補助」だなんて、まどろっこしいですね。正規の教職員さんがちゃんといて、僕はかれらが「特別な支援ありの教育」をおこなうためのサポートをする立場だったのです。生徒に寄り添って学習の支援をするのが主な仕事でしたが、ときには教職員さんのお手伝いをすることで間接的に「支援」に加わるようなこともありました。


そこは、個性的な生徒たちが集まる学級でした。あることに長けている生徒が、そのことに長けていない生徒を助けるとか、教えるといった光景が見られました。たとえば、聞いたり話したりすることが得意な生徒が、自分の世界に入ってしまって話についてきていない生徒に対して、今は何をやるべきときなのかとか、どうやってやるのかといったことを教える……というような光景です。


この教え合いは、この個性的な集団だからこそ見られた現象だったと仮定します。すると、「特別な支援ありの学級」に個性的な生徒たちを集めることで、「特別な支援なしの学級(この学級を、ときに「通常学級」「普通学級」などと呼ぶことがある……「通常」「普通」ってなんやねん、というツッコミをさておき……)」の生徒たちが、生徒の間で「引っぱり合い、教え合い、能力を高め合う」きっかけを、取り上げてしまっているんじゃないか……という仮説が立ちませんか?


「個性ってなんやねん」とか、「特別な支援なしの学級だって個性的な集まりだ」といったツッコミ・反論も、もちろん立つでしょう。大いに議論の余地がある問題だと思います。


「衛生環境と雑菌とヒトの免疫」という話から連想して、僕は自分の数年間従事した仕事のことを思い出したのでした。(決して、極端な個性の持ち主を「雑菌」に例えているのではありません。あくまで僕の連想による「思考の飛躍」であることを強調しておきます。「生」から「死」といった、反対のことだって連想されますよね。「反対」という解釈をしているのもまた、僕らですけれど……)


これはすなわち、現代の「衛生環境」に対する問いかけなのである……と結んでみる。聞いてくださって、ありがとうございました。