雨と散歩と、趣味と職業

毎日、朝にこの文章を書いています。家の外の公園を眺めながらそれをしているのですが、犬の散歩をする人をよく見ます。見たことのある顔ぶれが、毎朝通るのです。


たとえ飼い主が「今日は眠くてつらい」「行きたくない」などと思うことがあっても、犬のために必ず行くんだろうなぁと想像します。僕は、犬を飼ったことがありません。


犬のほうの気持ちはどうなんでしょうかね。向こうにだってそのときによってコンディションやモチベーションに幅があって、内心「行きたくない」と思いながら飼い主に合わせて散歩に行っている……なんて日があるのかもしれません。


昨日、僕はコミックマーケットに行ってきました。自主制作漫画(同人誌)即売会です。漫画を描くのが好き、読むのが好きであろう人たちが、巨大な展示場にたくさん集まっていました。特定の嗜好を持っていることを恥ずかしむ気持ちが、ひとむかし前のこの国にはあったのかもしれませんが、今ではさまざまな「マイナー嗜好(志向)」が市民権を得た雰囲気を勝手に感じています。漫画の方ももちろん見るのですが、集っている人たちの顔ぶれ、その個性や多様性を見ていると、そんなことを思います。


僕は本や漫画を読むのが好きだし、楽器の演奏や歌唱が好きでずっと続けていますけれど、それもマイナー嗜好(志向)だといっていいでしょう。誇っていいことだとは思いますが、自慢することでもなんでもなくて、あらゆる人のあらゆる営みに置き換え可能な行為なのだと思います。それがたまたま読書だとか音楽だとかであるだけで、さも教養が高いことかのようにわざわざ強調することでもなく、なんといいますかこう、奥ゆかしい感謝の念みたいなものが根底にあるのが望ましいのかもしれません。


僕がコミックマーケットに行ったのは、昨日が2回目でした。なるべく会場をくまなく回る努力をしたのですが、たまに目を合わせてくれる人や、「見ていってください」と声をかけてくれる人もいました。僕はまだまだこの「コミックマーケット」において、自分がヨソ者である念が強いのか、そうやってはたらきかけてくれる人たちに応じることができず、軽く頭を下げつつ通り過ぎてしまいました。手に取ってみたところで自分の趣味に合わなかったらどうしようと、びくびくしていたのです。たとえ自分の趣味とは違っても、たったひとつでもいいからその作品のいいところやすごいところを見つけて「ありがとう」を伝えれば、買わずに去ってもきっと失礼にはならないでしょう。そんなことが思い浮かぶのは、いつもその場面が過去のことになってからです。そんな自分に、たびたび悔しさを感じています。


そんなことを書き綴っているうちに、雨が降ってきてしまいました。こんなとき、犬の飼い主たちはどうしているのでしょうか。天候によっては、散歩をお休みする日もあるんでしょうか。僕はこのあと、レインコートを着てでも仕事に出ねばなりません。


自分と自分の職業との関係が、ふと犬と飼い主の関係に重なります。どっちがどっちかはわかりません。どっちにどっちをあてはめても成立するでしょう。いやいやいいながら、おつきあいする日もあるものです。