フィットした解?

変わっていないかのように見られていそうで、実は細かいアップデートや改良がほどこされて、いまの姿かたちになっている……というのが、長く残っているものやロングセラー商品の共通点なんじゃないかと疑っております。


車のワイパーって、「変わっていなさそうで、実はこまかい改良がされている」例にあてはまらないんじゃないかと思わせるくらいに、「変わってなさそうに見えるもの」のひとつかもしれません。ほかに、車のワイパーくらい変わっていなさそうなものを思い浮かべようとしても、なかなか思いつきませんね。なんでしょう、「鏡」とかどうでしょうか。進歩のしようがないもののようにも思えます。


車のワイパーがもし「変わっていなさそうで、実は変わっているもの」だとしたら、なにが変わっているのでしょうか。僕はワイパー部分の、窓に直接触れて拭う部分の素材とかが改良されていやしないかと想像します。より耐久性が高く、ほどよい吸着と摩擦でよりきれいに窓を拭ける素材に改良されていやしないだろうか……あるいは、ワイパーの「腕」の部分も、より劣化しにくい素材とかに改良されている可能性も、あるんじゃないでしょうか。


いま僕が着目したのは、素材のことばかりですね。デザイン的な部分はやはり変わっていなさそうだ……という自分の考えがわかります。


だいたいのものは、そのときに最もふさわしい形になっている……というのが僕の持論(おおげさですが)のひとつでもあるのですが、その姿が長く続くかどうかは、また別の話です。移ろい続ける、変化し続ける環境のなかにあるものだとしたら、その姿も長く保たれることなく、環境の変化とともに移ろっていくことでしょう。


僕は、長いこと同じ髪型をしているという自覚があります。顔の形や顔のパーツって、ころころと変わるわけではありません。だから、それに合わせる髪型を変える必要もないのでしょう。


長いこと僕の髪のカットを担当してくれているのは、美容師をしている実の兄です。彼の技術の進歩は、ずっと同じような髪型にしてもらってる僕にも感じられる部分があります。経験値が増え、対応力は高まり、より高い水準でのパフォーマンスが安定して発揮されるようになったようにも思います。僕の顔の形は変わりませんが、髪質は老化していくかもしれません。その髪を切る、兄の技術は、これからも進歩していくかもしれません。


モデルさんなんかは、頻繁に髪型を変えることがあるでしょう。仕事ですからあたりまえですけど、最適解としての髪型がない、あるいは複数の解がある、ようはなんでも似合う顔の形や顔のパーツをしている、ともいえそうです。


僕のつまらない持論のひとつに、「美人の顔は覚えられない」というのもあります。印象が薄いのです。いろんなものが似合うフォーマット、その黄金律みたいなものがあるのだろうと思います。モデルさんとマネキンを同一視するわけではありませんが、「マネキンに最も似合う髪型ってなんだろう」という問いには、答えがないような気がします。


いろんなものが似合ってしまったら、なにを自分にフィットさせるか迷ってしまわないでしょうか?  その点、なんでも似合ってしまうひとが、さまざまなものを自分にフィットさせる(あるいは自分がフィットされる)モデルという職業を選ぶのは、適した解であるようにも思えます。