かろやかさの芳香

ビートルズの曲は、3〜4分に満たないものが多いですね。形にしばられないかろやかさみたいなものを感じます。

J-Popといわれる音楽のなかには、律儀に「定型」を踏襲した作品も多くあります。イントロがあって平歌があってBメロがあってサビがあって、この構成がくりかえされて、そのあとにおおきな間奏が入って大サビが入って、最後のサビがあって終奏……といったような形のものです。このことは、ときに形式を重んじる日本人の気質と結びつけて語られることがあるようです。

僕はビートルズのものでなくても、短くまとまった、そう、たとえば3〜4分未満におさまったコンパクトな楽曲を好きになることがあります。そうした曲に魅力されて、何度もくりかえし聴くようなこともありました。

短いながらも魅力的に仕上がっているものは、それだけその作品を構成する章だて、各パーツ(こまかい部品)が輝いているしるしです。全体の「かさ」が少ないと、「捨てパンチ」みたいな役割にあまり作品のかさが割かれることもありません。

ひとつの作品のなかで起伏や緩急をもたせるのは、効果的な演出や構成の定石でもあります。短い作品においてももちろんそれはあてはまる場合があるかと思いますが、あまりのひとつひとつの数少ない部品のかがやきが、もはやそんな定石を必要としないこともあるのです。ググッとコンパクトにまとめあげられることによってにおいだす「かろやかさ」みたいなものがあるように思います。

自分がなにかをつくる際にも、こうした「かがやき感」や「かろやかさ」をにおわせたいというのは、つねづね思うことでもあります。

そのときだけの「境地」に至ることができたとき……その作品だけの景色を「みる・みせる」ことができたとき……そんなときにだけにおう、芳しい香りです。