モアレス

テープレコーダーをゆっくり回して記録すると、長く録音できるかわりに音質が下がります。テープを早く回して記録すると、あとでゆっくり再生しても、鮮明によみがえります。


時間の流れが一定だとしたら、自分が早く流れれば相対的に時間はゆっくりになるし、自分がのろのろと流れれば、時間の流れは早くなります。


テープを早く回してたくさん使うことは、贅沢なことかもしれません。


何気ない1日を細かく汲み取り、見つめられるようなときって、自分に余裕があることの表れであるようにも思えます。


余裕がないからと、テープをけちけち、ゆっくり回す。すると、めまぐるしく周りの時間は過ぎ去るのでしょう。


ところで、虫眼鏡で拡大して見ると、認識できなかった細かいところがより認識できるようになります。


一度写真に撮ったものを拡大して見るのとは、わけが違います。


自分の目の認識できる細かさが変わるわけではありませんから、虫眼鏡に細部を認識できるレベルに換えてもらっているのです。


これを「拡大」と呼んだりします。拡げ、大きくすると書きますが、虫眼鏡でものを見る行為に当てはめていえば、より狭い範囲に観察する範囲を限定することともいえます。その認識できる「細かさ」を「拡げて」いるのです。なんだかややこしいですね。『「少ない」を「もっと多く」』というような、持ち回った言い方です。


細部を見ていくほどに、認識できる絶対的な範囲は狭まっていきます。


広く見ようとし過ぎて、どこに焦点を当てて良いかわからないようなときにこそ、虫眼鏡でものをみるような観察が生きてくるのかもしれません。