こども椅子との生活

ものや人をひとつの場所に集めるのは、たいへんな労力のいることだと思います。


それでも、多くの人が魅力を感じる催しには、どこにこんなにいたんだろうとばかりに人が集まってくるようです。


インターネットで、倉庫から直接家に届くような買い物が増えています。


売り手が店番をしたり、お客が出向く手間暇を省いて売買するというサービス。売り手も買い手も、浮いた時間や労力をほかのことに使えます。


対面や展示を介しての売買とは、そういうサービスなんだなぁと思います。


売り手はどんなお客さんがどんな反応を示して、購入するとかしないとかの決断をする様子を見ることで、新しい商品をつくったり、今ある商品の改善をするヒントになるのでしょう。


お客さんはお客さんで、商品の実物を見たり触れたりすることでしか得られない情報を購入の参考にすることができます。売る人や店構えのセンス、人柄なんかもわかるから、品物を得るだけではない一連の体験そのものがお客さんにとってのサービスなのでしょう。


作り手や売り手の意図、提案などに納得して購入にいたった品物は、その後の生活においても大切にされるかもしれません。


自分の家の中、身のまわりにある品物で、日々活躍しているもののなかには、その品物を家に持ち帰ることを決める前後の一連の体験が思い浮かぶものがあります。


大切なだれかと一緒に選んだものだったり、自分であれこれ悩んで決めたものだったりもします。


最近のもので印象が強いのは、新宿御苑のとあるイベントで、自分で作って持ち帰ったこども椅子です。 


「作って」といっても、用意された部材をダボやボンドで組み上げただけです。材料と、スタッフによる制作指南つきで千円でした。


芝生に設営された白いテントのもとに敷かれたベニヤの上で、10分程度で組み上がりました。初秋の新宿御苑で西日に照らされながら、ぐずり気味の息子を背負って作った覚えがあります。


帰宅したこども椅子は、おもに息子の足台になっています。ときおり僕も座ります。高さ20センチ程度なので、大人が座ると幼児と目線が揃います。べつの座椅子に座った時の物置きにもちょうどいい。家族が寝た後に、酒を注いだグラスを傍らに置く、サイドテーブル代わりにもなっています。



ワークショップのような内容を含んだ販売、サービスのかたちはやはり対面でないとできません。


品物に付随する、体験にお金を出すような催しは、ネット販売が普及しても、盛り上がりを見せているようです。