5足歩行のデスク人

赤ちゃんは1日のうちのほとんどを寝て過ごす。


10代や20代なんかは勉強や仕事の無理が利いて、長く起きていられるけれど合間に隙があれば一度にまとまった時間眠れたりする。


僕はいま30代だけれど、いま人生でいちばん睡眠時間が少ないかもしれない。

20代よりは早く寝るようになったけど、朝もっと早く起きるようになった。


子供ができて、静かにひとりで過ごす時間を持つにはみんなが寝ている時間を割くしかない。

うしろに延ばして深夜に時間を持ってもいいけれど、1日の疲れがあるし、太陽のない時間はどうも頭も体も働かない気がする。


これはただの習慣で、夜に適応するようにリズムを作ればべつに深夜でもかまわない。人間はそういうふうにできていると思う。僕がたまたま朝にしているだけだ。朝はさわやかだし、1日のスタートを早めに持つとちょっとした優越感がある。


20代のとき、リズムがもっと遅い時間帯にズレていた。このときも、深夜みんなが寝静まったころに「僕の時間キタ!」といった優越感を感じて独りを楽しんでいた。やはり習慣の問題で、夜か朝かは個人の好きなようにすればいい。


限度はあれども、睡眠時間が少なくていいのは人間の活動の盛りの年代なのかもしれない。これがとある期間続き、だんだんしんどくなると眠りがまた増えていくのだろうか。


高齢になって、あまり動けなくなるとベッドにいることが増えていく。そのうちどれくらいの時間を実際に眠って過ごすのかはわからないが、赤ちゃんのように、食事などどうしても起きている必要のあるとき以外は眠ってしまうのかもしれない。


二足歩行で太陽のもとに立ち、活動する時間を長く持てることは、人間の発達を象徴しているようでもある。


日中ずっとオフィスの事務室なんかで、両足を地につけ、おしりをいすにつけ、両肘をデスクにつけていたりなんかすると、う〜んなんかもっと立って動き回って過ごしたい、という気分になるのは人間の発達を持て余しているからなのかもしれない。


身体中をデスクに縛り付けていても、思考のアクロバット運動はできる。でもそれは前後に身体を使って経験、実感したことがあるからこそのパフォーマンスである。


頭も身体の一部だし、身体も頭の一部だし。