高精細そっくりさん

iPhoneのカメラでカシャカシャとよく写真を撮ります。画面に集中しながら、撮りたい画を真剣に見定めて撮っています。

画面に映し出されるのは、デジタルカメラのしくみにしたがって忠実に再現された像です。そのしくみがとても高精度になっているので、かなり本物そっくりの画が得られます。でもどこまで高精度になっても、それはあくまで「そっくりさん」。平面に再現された像と、実物はまったく違います。立体で再現される像が、どこまで高精細になれば僕らは見分けがつかなくなるのか、といった問題はちょっと興味があるけれど、ここでは置いておきます。

鏡の中に映る像も、左右が入れ替わった偽物です。デジタルカメラとはまた違ったしくみによる虚像です。複数の鏡を使って、反転させたものをまた反転させて撮るようなカメラもあるようです。あまり詳しくないのですが、ファインダーやレンズ越しに見る風景もまた独特なものに見えます。

ものを直接みることで、はじめてありのままの姿を観察できるかとも思うのですが、これも厳密には「自分」というしくみにしたがって知覚されたものの姿でしかありません。それ以上も以下もないのですが、ものの知覚のしかたも個人によって差があるように思います。知覚のしかたに差があるというと少し語弊があるかもしれませんが、たとえば視覚についていえば、色や光の強さの感じかたは人それぞれなんじゃないかと思うんです。他人の知覚を体験することは出来ませんから、こればっかりは想像でしかありません。世の中には「色弱」とか「色盲」といった人もいて、色の認知に個人によって差があるのは事実なようです。僕自身も幼い頃に、紫色と茶色にやや色弱傾向がみられる、といわれたことがあると親から聞いたことがあります。子供の頃は、僕が紫というものを違うと指摘されたことが何度かあったことを記憶していますが、成長するにつれてそういうことは少なくなったように思います。日常生活には全く支障のないレベルです。実際僕が今も色弱なのかもわかりません。

性別によって光の色の識別能力に違いがあるという実験を、所ジョージさんの出演する朝の科学番組で観たことがあります。イルミネーションを好きなだけ鑑賞して戻ってきてください、という実験をすると、男女で鑑賞時間の長さが明らかに違うというものでした。女性の方が光の色を、より細かい段階に分けて違いを判断できるとのことで、その判断能力の違いが、イルミネーションを楽しむ時間の長さにもあらわれている、というものでした。

同じ人間でも、性別によって見えかたが違う。個人によればさらに細かな違いがあるでしょう。カメラのファインダーを通しても、デジタルに変換された画面を通しても、鏡に映しても本物そのままとはちょっと違う。

そして、自分の目に映したときでさえ、ありのままとは限らないということがいいたいのでした。その特性やしくみを知っておくことが大事で、自分にはこう見える、こう感じる、ということと、他人の感じかた、他の方法による認知のしかたとの違いを知ることは、よりありのままを理解するための材料になるはずです。「目」だって、ひとりに2つついてるくらいですからね。